菩提苑2013年06月18日
黒子(くろこ)となり、「つながっていく」「つなげていく」ことが私の使命です。
宗派を問わずに供養できる全国でも数少ない場所として、菩提苑は平成19年春に誕生しました。今回の「働く人々」は主任の明石亜矢子に迫ります。
ご先祖様へのご供養や仏様へのお参りが、円滑に進むように、さりげなく声をかけ、お世話をする。訪問者も徐々に増え、今でこそ菩提苑の顔になった明石だが、オープン当初は暗中模索の日々を過ごした。
- 明石
- 菩提苑の理念に深く共感し、ぜひともお仕事をさせていただきたいと思いました。ただ、私で務まるのかとの不安ももちろんありました。
百貨店勤務で社会人のスタートを切り、専業主婦を経て介護職で仕事現場に復帰した。腰痛に悩まされ、転職を視野に入れた時に菩提苑にたどり着いた。未知の分野―。不安を払しょくするかのように仏教関連の書籍を読み漁ったが、勉強すればするほど奥深さを痛感した。自分の限界を超え、プロとして〝働く人々〟の責務を果たせない申し訳なさも味わった。
- 明石
- ご遺族様のお話を聞いている際に、自分自身が冷静さを失うこともありました。今ではしっかりと切り替えることが出来るようになりましたが、当時は未熟な面も多く、ご迷惑をおかけしたと反省しております。
だが、彼女の真摯な人柄・対応は訪問者の心に、ゆっくりだが着実に響く。老若男女問わず親しまれるようになり、「明石さん、受かったよ!」と受験合格の報が届くまでになった。理想から始まった明石の仕事はかすかな自信に、さらには明確な誇りへと変わった。きっかけは、ある50代女性のご遺族様の姿だった。
- 明石
- その方は、お母様のお葬儀では泣くばかりでしたが、菩提苑でご住職の法話を聞くことで、次第に「死」を受け入れる心構えが出来たのでしょう。数年後、お父様のお葬儀ではしっかりと対応されていたとのことでした。その時に私は自分がとてもありがたい仕事をさせていただいている、と心から実感しました。
多宗派のご住職が来られる菩提苑では、柔軟な対応が求められる。写経や坐禅会、盂蘭盆会などの行事もある。それぞれが大切だが、明石が最も大切に想っているのが故人様、ご先祖様との語らいだ。お参りは、追善供養になるだけでなく、ご自身とご先祖様との絆も強くする。
- 明石
- 故人様、ご先祖様へ語りかけると安らぎになります。ご先祖様とのつながりもより強固なものとなるでしょう。「つながっていく」「つなげていく」役割をまっとうできるように、私は黒子に徹したいと思っています。
お葬儀が済んでから始まる50年のご供養。「この場所があって良かった」「気持ちが楽になったよ」とのご遺族様の声が、働く明石の背中を押す。
【幸せ風船109号 [2013 SUMMER]より転載】
- 菩提苑 主任 明石 亜矢子プロフィール
- 1967年(昭42)、大阪・堺市生まれ。平成18年12月にセルビス入社し、菩提苑オープン時から仕事に励む。趣味は音楽鑑賞でコンサートに行くこともある。